まるでお経を読むかのような [本]
「愛国と信仰の構造 全体主義はよみがえるのか」
政治学者中島岳志氏と宗教学者島薗進氏の対論は、まるで素人がお経を読んでいるかのような、私にとっては
そういった感覚にさせる対論ですね。バックグラウンドがないと何を仰っているのか判然としない。
何回も読み返さないと多分理解できないのでしょうが、
指摘としておもしろいと思ったのは24頁 【 中島 大政奉還・明治維新から数えて、第2次世界大戦までがおよそ75年なのです。そして、終戦から数えて現在が70年あまり。 島薗 近代日本150年の歴史は、第2次世界大戦を境に、75年で区切ることができるということですね。そこが、ちょうど近代日本の歴史の折り返し地点だと。 中島 さらに、この75年という歴史を細かく区分してみると、およそ25年くらいの単位で、日本の社会は大きな変化を経験してきたと言える気がするのです。(中略) 社会学者の大澤真幸さんはおよそ25年という長さで日本の社会のパラダイムが変わってきたという非常に優れた分析をなさっています。そして、この25年ごとの時代区分三つを、戦前と戦後で並べてみると、何が見えてくるのか。実はそれぞれの時代区分ごとに、どこか似たところが浮かんでくるのです。大澤真幸さんは、この三つの時代が、平行するように繰り返しているのではないか、と指摘しています。 】
137頁 【 左翼は人間が理性を存分に使って正しく設計すれば、未来は良い方向に変革できるはずだと考える。一方、右翼や保守はそうして「理性万能主義」には懐疑的です。(中略)右翼は、歴史を遡り、過去の社会にユートピアを描いてしまう傾向があります。過去のよき社会を復古させることさえできれば、世の中はユートピアになると。けれども、保守は、未来にも過去にも、ユートピアを求めないのです。絶対に人間は誤るものである。だから、少しだけでもよりよい社会にするためには漸進的な改革を進めていくしかないのだという立場です。】
緊急事態条項は必要か [本]
しっかりと見据える目
よく聞こえるけれど、聞かなくてよいことには耳を貸さず・・・
岩波ブックレット945 「憲法に緊急事態条項は必要か」 永井幸寿著 P38から
【 東日本大震災の事例を見ればわかるように、東日本大震災で適切な対処が出来なかった理由は、法の適正な運用による事前の準備を怠ったことによるものであり、準備していれば充分対処出来たものです。また「人権を守るため」国家緊急権を用いると言っていますが、全く逆です。国家緊急権は「人権を守るため」の制度ではなく、「国家を守るため」に人権を制限する、場合によっては人権を犠牲にする制度です。(中略) 予想を超えたところに制度を設けるとその先にさらに予想を超えたことが起き、その先に制度を設けることが必要になります。日本国憲法はこのようなことが権力の濫用の危険があるとして国家緊急権を敢えて設けなかったのです。
国家緊急権は災害対策に障害となる 】 と続き
実際の実施要領として
災害対策基本法や大規模地震対策特別措置法、警察法、自衛隊法、災害救助法、原子力災害対策特別措置法、新型インフルエンザ対策特別措置法など、実際の行動に照らした法制度はすでに整備されている、と。
著者は阪神・淡路大震災で事務所が全壊してから21年間災害関連法制に関わってきた弁護士さん。しっかりとした視点と論点で、国家緊急権の危険性を教えてくださいます。
日本会議と [本]
「日本会議の研究」 を概略すれば、日本会議を主導するのは、「日本青年協議会」であり、それは『生長の家 学生運動』出身者たちである。しかし実は、現在安倍首相のブレーン5人衆とも呼ばれる「日本政策研究センターを主宰する伊藤哲夫、日本会議事務総長の椛島有三もその他諸々の人たちも安東巌の使い走りに過ぎない。
彼らは地道に市民運動として各地の議会へ請願活動をして、国民の声としての自分たちの主張を訴え続け、元号法制化運動以降、着実に成果を上げている、と。
最後にこう書かれている。【 やったって意味が無い。そんなのは子どものやることだ。学生じゃあるまいし・・・と、日本の社会が寄ってたかってさんざんバカにし、嘲笑し、足蹴にしてきた、デモ・陳情・署名・抗議集会・勉強会といった「民主的な市民運動」をやり続けていたのは、極めて非民主的な思想を持つ人々だったのだ。そして大方の「民主的な市民運動」に対する認識に反し、その運動は確実に効果を生み、安倍政権を支えるまでに成長し、国憲を改変するまでの勢力となった。このままいけば、「民主的な市民運動」は日本の民主主義を殺すだろう。なんたる皮肉、これでは悲喜劇ではないか!】
「政治家はなぜ日本会議に寄ってくるのか」という自問があって、思想信条を越えてそれは確実に票になるからだ、と答えています。あの政党と同じ構図で、票になるなら政治家は甘い汁を吸いにくる・・・・ある意味、それは政治家の宿命である・・・と
今話題の日本会議 その事務総長がこの本の出版差し止めを求めたのは安東巌氏のためでもあるのでしょう。
重鎮と泰斗 そして使命 [本]
改憲派の重鎮 小林節氏と護憲派の泰斗 樋口陽一氏の対談集
「憲法改正」の真実 なんとか読み終わりました。本の帯にも書いてあるように、小林氏は「自民党案なら日本は先進国の資格を失い」樋口氏は「国家の根幹が破壊されてしまう」という強い恐れからこの対談が組み立てられています。
折り返しをいくつもつけながら読んだ中でも、最もお二人が言わねばならないと思っているであろう部分、普通の人でも分かるように仰っている部分は、224頁ですね。
「 樋口 (中略)欧米をはじめとする近代立憲主義国家と価値観を共有する道から日本は引き返し、東アジア型の権威主義、専制主義の国家に向かうのだ-。これは近代国家の否定です。私たちが考える普通の国の原則を捨て去るということです。こんな思想を持つ人々が、現在の日本の権力の中枢にいるのです。
小林 目指すところは、独裁国家、北朝鮮。こう言うと、冗談のようにしか聞こえませんが、専門家の知見として、そうだとしか言いようがないことは、第二章から第七章までで詳細に明らかにしたとおりです。つまり、
①主権者・国民が権力担当者を縛るためにある憲法で、逆に、権力者が国民大衆を縛ろうとする。
②各人の個性を尊重することこそが人権の本質であるが、それを否定して、国民すべてを無個性な「人」に統一しようとする。
③海外派兵の根拠を憲法条文の中に新設し、その実施条件を国会の多数決に委ねてしまう。
④国旗・国歌に対する敬譲や家族の互助といった本来、道徳の領域に属する事柄を憲法で規定する。
まさに、皇帝と貴族が支配する家父長制国家です。
222頁に戻りますが、小林氏は「現在は幸いまだ『投票箱』が機能しています。反故にされた憲法を奪還するためのこの闘いにおいては、言葉という武器が有効です。その言葉を用意するのが、この局面での憲法学者の使命でしょう。樋口先生とのこの議論も、そうした使命を果たすためにはじまりました。」と言います。
詳しくはぜひこの本を手にとってご自分でご確認ください。ぜひ読んでいただきたい、1冊です。
無私の心で使命感を持って語る言葉に耳を傾けてください。
雨粒が思わぬ情景を作るように、透けて見えるものがあります。
やっと入手 [本]
「愛国と信仰の構造 全体主義はよみがえるのか」集英社新書
本屋さんに頼んでのお取り寄せでやっと今日夕刻入手しました。かなり手強そうです。
ゴールデンウィーク中に読み終えるはずだった「憲法改正の真実」や「日本会議の研究」も、実は未だ読み終えていないのです。でも、この4冊を読めば、今の社会状況がかなり明らかになるだろうという予感はあります。
それぞれの著者が考えている、今この国が抱えている課題への分析や考察から多くを学べると良いのですが。
オルラヤ
ハハコグサ
明日は憲法記念日 [本]
今ネットで話題になっている「日本会議の研究」扶桑社刊と
「憲法改正の真実」「憲法に緊急事態条項は必要か」 計3冊 アマゾンで注文、今日届きました。
もう1冊「信仰の相続」もできれば、ゴールデンウィーク中に読みたいですね。
Mさん、昼から急遽思い立って、黒豆入りと高菜漬け入りをつくってくれました (^^
仏教聖典 [本]
ホテルのベッドサイドに置いてある仏教聖典
チョット開いてみましたらあの有名な章句がすっと出ました
怨みは怨みによってしずまらない
怨みを忘れてはじめて怨みはしずまる
なかなか出来ないですね
テロの連鎖の中に生きる私たちへ
奴隷制 [本]
「いまがわかる 世界史の教科書」洋泉社刊
以下P181より抜粋
【 温暖な南部の地域では独立以前から、大地主たちによる大農場が普及し、とくに黒人奴隷を大量に酷使する綿花栽培で経済的に発展しました。対して北部では、資本家主導で産業革命がはじまり、工業中心の経済となっていきました。
南部では綿花をイギリスに売り、イギリスから優秀な工業製品を買うという相互依存のスタイルをとっていました。これを北部では不快に思っていました。北部の製品が売れないからです。北部の資本家は、イギリス製品排除と市場確保を目的とした保護主義を主張するなどして、南部市場を独占しようとしました。これに対して南部は、市場独占ありきの北部に嫌悪感をにじませます。
それでも南部勢力の大統領が続いたため、南部は優位でした。事態はリンカーン大統領によって変わります。リンカーンは奴隷制度廃止を訴えて支持を集め、北部勢力の大統領として当選します。
ところで、資本家にかぎっていえば、奴隷制度反対は決して人道上の見地からではありません。彼らは「奴隷より労働者を雇うほうが、コストがかからない」という現実的な理由で反対したのです。】
奴隷制廃止へと向かわせた理由は、実はコストだったが
理念として善であり、あなた方が目指す方向性は正しいというお墨付きが
ピューリタン 精神だったと
奴隷解放のカギがコストだったとは、私は知りませんでした。
考えてみれば、すべて人の活動を支える主体は経済です。
それを正当化するための論理や主義を作ってきたのが人の営みです。
新自由主義がその代表でしょう。
食うために主張してきたのが人間ですが
もっとも~~っと楽をするために主張し始めると世界は今のようになるのですね。
民主主義が大切だと思う人は、その経済的な理由、絶対的に善であり理に適う経済的理由を
しっかり構築して説明できないと、駆逐されかねないです。
鈴木孝夫 [本]
年越し読誦会の用意です
今年最後に図書館から借りた本はなかなか読み応えのあるものでした。大正15年のお生まれ(うちの母より年上の満89才?)で、未だ講演活動をされているとのこと。是非直接お話をお聞きしたいと思える方です。
「日本人は なぜ日本を 愛せないのか」
鈴木孝夫著 新潮選書
この本は10年も前に書かれた本です。
TPPの条文をなぜ日本語の正文として表記するよう求めないのか?ということ(の重要性)が、すでに10年前に書き尽くされています。
P117 [本]
発表の場 の章より
才ある者に見え、才薄き者にはとらえられない世界が歴然とある。努力で埋められることもあるが、超えられないこともある。
その差は、秀でた走者が他を抜いて走るように目に見えて明らかなことだが、感じる世界のことは違いがわかりにくく、暗き感受性同じように見えてしまい、悲しいことだが気づかずに通り過ぎていく。
人は、生まれたときがスタート時点だと考えると割り切れないことが多い。しかし、それはしかたのないことで、人は違いがあり多様だからおもしろく、それがまた次の何かの原動力になってもいく。
P117より
『色彩は魂のクリスタル』 画家 通天のこと 絵森ミチル著 彩流社発行
画家の人となりをしっかりと捉えて、まるで本人が目の前にいるように書いています。
「才ある者のには見え、才薄き者には捉えられない世界がある・・・」
お薦めです。是非お読みください。